男性に多い鼠径ヘルニア。最近では若い女性にも増加傾向。嵌頓(かんとん)になってしまうと危険!
「鼠径(そけい)」部とは、太もももしくは、足のつけねの部分のことをいい、「ヘルニア」とは、体の組織が正しい位置からはみ出した状態をいいます。「鼠径ヘルニア」とは、本来ならお腹の中にあるはずの腹膜や腸の一部が、多くの場合、鼠径部の筋膜の間から皮膚の下に出てくる下腹部の病気です。一般の方には「脱腸」と呼ばれている病気です。
鼠径ヘルニアは男性に多い病気ですが、最近は女性にも増えています。
鼠径ヘルニアには次の3つがあります。
幼児やほとんどの成人に、多く見られます。
中年以降の男性に、多く見られます。
脚とお腹の鼠径靱帯の下から、腸などの組織が外に出て膨らむ病気で、女性に多く見られます。
飛び出た脱腸(そけいヘルニア)部分が、筋肉でしめつけられ戻らなくなった状態になってしまいます。この状態を、嵌頓(かんとん)状態といいます。
嵌頓ヘルニアになってしまう危険性があります。
通常は寝たり、手で押す事によって戻るヘルニアですが、元に戻らなくなった状態を嵌頓(かんとん)といいます。
かんとん状態になってしまうと腸がしめつけられ、やがて壊死してしまいます。
女性に多い大腿ヘルニアは、嵌頓(かんとん)状態になりやすく、早急な治療を必要とします。
嵌頓(かんとん)する危険性が少ないにしても、鼠径ヘルニア(脱腸)を根治できる方法は手術しかないのも事実です。ヘルニアを放置したまま一生過ごす方は多くありません。
嵌頓(かんとん)を起こしやすい太腿ヘルニアの治療は手術になります。
出産経験のある高齢女性に多く見られます。
子宮内膜症や子宮円索静脈瘤などと間違われやすいこともありますので、きちんと診断を受けましょう。
女性の脱腸治療では、妊娠を考慮することが大きなポイントになります。 妊娠を考慮する場合の治療には、メッシュプラグやクーゲルパッチは向いていません。パッチを体内に入れる事によって妊娠時に違和感が発生する場合があるからです。通常の腹膜を縫い合わせる手術を行います。パッチを使った手術と比較して、少し突っ張った感覚が残りますが自然に治ってきます。多くの症例から適切な治療を行うという考えで、安心して手術を受けていただけます。
手術法は人工の補強器具を使用しないバッシーニ法(従来法)や人工の補強器具を前方より固定するメッシュ&プラグ法や、後方より固定するクーゲル法、腹腔胸鏡下法があります。
緩んだ腹膜や筋肉を糸で縫い合わせ、脱出の原因である鼠径管の入り口を狭める方法です。従来法と呼ぶだけあって、人工の器具を使用しない以外にこれと言ったメリットはありません。デメリットも他の手術より多いので、今はそれほど見かけない手術法です。
人工の補強器具を使わない手術法になります。現在はあまり行われていなくて、補強器具を使った、メッシュ&プラグ法や腹腔胸鏡下法が行われています。
皮膚切開創は、ヘルニアのある方の鼠径部で、横方向に4~5cmで行います。図2に示したようなポリプロピレン製の円錐形のメッシュ(プラグ)を、筋膜の弱くなった部位にあてがい、周囲の健常筋膜に固定する事により補強する方法です。通常この上にさらにポリプロピレン製のメッシュシートを敷き詰めて周囲の組織も補強します。
人工の器具を使用した手術です。バッシーニ法(従来法)に比べると、患者の身体への負担が少ないなどのメリットがあります。
内視鏡で必要部位に人工補強器具を入れる手術法です。
メリットは開腹手術に比べ、傷跡が小さく痛みが少ない。
デメリットは費用が高額になってしまう。
クーゲル法では、筋膜の下に形状記憶型のメッシュを挿入し、腹圧がかかってもメッシュがめくれることはありません。メッシュが腹壁を支えているため、異物感が少ないという利点があり、従来のメッシュの欠点であったズレやたるみが少なくてすみます。
ポリプロピレンのメッシュを使った手術法です。
傷跡が少なく入院期間も短くすみます。
お腹に力をいれてもメッシュがめくれにくい利点があります。
鼠径ヘルニアの手術は開腹するものから、内視鏡でのものまであります。
傷跡も小さく目立たない状況までできるようになりました。
若干、費用は高めですけどね。
太腿ヘルニアからの嵌頓(かんとん)状態では腸閉塞になることもあり大変危険です。
少しでも気になるようなら受診して診察してもらいましょう。